「オーディーンを見て思った」
「何だよ」
「あれは、より大人になったヤマトファンのためのヤマトのリメイクなのだ。つまり、より本来のコアな形に近いヤマトなのだ」
「戦艦大和は本質ではないってこと?」
「そうだ。もともとの企画に戦艦大和はいない」
「じゃあ、帆船でいいわけ?」
「より正確に言い直そう。子供が大挙して最後の宇宙戦艦に乗って地球を救うなんて話はあまりにも嘘くさい中二病だ。むしろ、若者が集団で乗り込むのは練習船だ」
「より的確に物語の本質を抽出すると戦艦大和より日本丸ってことだね」
「そうだ。そして、日本丸はSFを経由して神話の世界に行く。その冒険を経由して子供は成長し、世代交代が行われる。それが宇宙戦艦ヤマトという物語の本質であり、それがもっとストレートに出ているのがオーディーンという作品であったのだろう」
「それが結論?」
「いいや。そのように考えると、ヤマトはバトルシップでは無いのだよ」
「帆船ないし練習船ってことだね」
「もううろ覚えだが、子供の頃に見た国語辞典によると、クルーザーの意味の1つが【快速帆船】だった」
「帆船かよ」
「そうだ。帆船だ。だから、そういう意味ではSPACE BATTLESHIP YAMATOはあまりイメージに合わないのかもしれない。SPACE CRUISER YAMATOの方がより本質に適合しているのかも知れない」
「その考えを延長していくと、けっこう怖いぞ」
「そうだ。あくまで戦艦大和を前提に宇宙戦艦ヤマトに参加した松本零士はあくまであれを戦艦と認識しているかもしれないが、本質においては戦艦ではない」
「そのまま話を延長すると……」
「そうだ。ひたすら軍艦のイメージでヤマトを描こうとするSBヤマトにせよヤマト2199にせよ、足を踏み外している可能性がある。つまり、言い換えればそこですくい取れなかった客層があることが示唆される」
「君がそうだってことだね」
「まあ、奇跡のヤマト復活で興奮しているから見ちゃうけど、オーディーンの主人公が練習生の候補から落ちたのに強引に乗り込む無謀な若者でしかない冷めた世界観からすれば、地球を救う戦闘班長古代進はもの足りないね。あまりにご都合主義の中二病」
「では、間違っているわけ?」
「そうとも言えない」
「なんで?」
「客層はみんな中二病だから」
「ひ~」
とろがどっこいヤマト2199 §
「でもね。MXの再放送を見て気付いたのだ」
「何に?」
「ヤマト2199は大昔の故事にならって赤道祭をやっているので、そこでオーディーン的な価値観は継承しているとはいえるのだ」
「えっ? 船乗りの感覚?」
「4話の食堂で帆船の映像も投影しているしな」
「そこに来るわけ?」
「ちゃんとオーディーンも意識してるよ」
「なるほど」
「けして勘違いしてライディーンではない」
「いや、それは関係ないから」
オーディーンの問題 §
「で、オーディーンって流行ってなかったよ。何が悪い訳?」
「うん。いい質問だ」
「なんだよ」
「実は大人になったヤマトファンには2タイプがある」
「2タイプとは?」
- 卒業しちゃったタイプ もうアニメも映画も見ない
- 卒業できないタイプ 未だに中二病患者。子供向けしか受け付けない
「あれ。それじゃ大人向けアニメ映画を見る客層がいないじゃないか」
「そうだ。ちょっとしたボタンの掛け違えにより、オーディーンは客のいない場所に吠えてしまったようだ」
「ひ~」
オーディーンの良いところ §
「君が気に入ったオーディーンの良いところを教えてくれ」
「そうだな」
- 地球の運命とか一切関係無い旅立ち
- 筋が通らない宇宙船のふざけたデザイン
- 先生を職員室に閉じ込めちゃう船内クーデター
- 無理しちゃいけないのに若者と酒を飲んで死んじゃう自業自得おっさん
- 実写で顔を出すラウドネス
「いや、それはとても気に入っているようには思えないぞ」
「そうか? けっこう気に入ってるぞ」
ヤマトの奇跡とは §
「そもそも、ディスコアレンジがCD化されただけで十分に奇跡。そのためのヤマト2199だと思えばヤマト2199バンザイだ」
「ヤマト2199はどうなんだよ」
「良いところもあれば食い足りない部分もある。一言では言い表せない」
「復活篇だと?」
「良いところもあれば良い部分もある」
「全部良いのじゃないか」
オマケ §
「サンフランシスコのフィッシャーマンズ・ワーフに保存船としてリバティ船「ジェレマイア・オブライエン」、隣にパラオ級潜水艦「パンパニト」。サンフランシスコ海洋国立歴史公園が近い。そこにも複数の保存船がある。すげえな」
「見に行きたい?」
「行ければ行きたいが無理だな」
「なんて?」
「金なら全部ヤマトに吸われた」
「ひ~」
「というわけで、ジェレマイア・オブライエンの模型だけAmazonからオーダー中だよ」